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Q_032 耐震補強工事の優先順位

最終更新 2007.12.17

私は愛知県に住んで居ます。

当地区は地震危険地帯に入ります、今古い家屋のリホームを考えており、ご相談させてください。

建物は築80年の物で基礎は柱が玉石にのっている形で固定されておりません、瓦は従来の物と同じ重い物で10年前に葺き替えしました。

私なりに耐震工事を勉強しましたが、柱と梁の金具による補強や地面との固定、壁面の壁補強(壁を多くする)等がありますが、どれをまず考えるべきかをご指導下さい。


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まず最初に受けなければならないのは耐震診断になります。

耐震診断に関しましてはいろいろ方法がありますが新基準 「木造住宅の耐震診断と補強方法」  財団法人日本建築防災協会発行 国土交通省建築指導課監修の【一般診断法】による耐震診断で十分です。

耐震診断には【 動的診断 】といって実際に振動装置を建物に設置して建物を揺らす様な検査法もありますが、あくまでも補助的な診断であり一般木造住宅の場合は特に必要ありません。(一般診断で補強が不要との判断が出た場合の追試として検討する場合があります。)

耐震診断は都道府県や市区町村役所などが実施している場合がありますのでお問い合わせください。また有料の場合でも診断だけならば4万円程度が一般的です。

一般診断法による耐震診断により、多くの耐震上の欠点が浮き彫りになります。通常診断結果の中で大きく建物の耐震性能評価を下げている欠点から補強を行う事で費用対効果の高い補強を行う事が出来ます。

一般的には次のような優先順位で検討を行います。尚、実際の耐震補強計画を立てる場合は、最初の診断時の【一般診断法】では無く建物の部分的な補強工事の結果を評価反映可能な【詳細診断法】により検討を行う事により補強費用を少なくする事が出来る場合があります。 

1、耐震壁の配置バランス          
2、壁の量又は強さ
3、柱脚・柱頭・筋交い金物
4、屋根の軽量化
5、基礎の補強

ちなみに1番の項目に問題があるのに1番の項目を飛ばして2番の項目の工事を実施する事は現実的ではありません。同様に1番から3番を飛ばして4番や5番の工事をしても工事の効果が十分発揮できない事が多々あります。順番を守らないと補強効果が出ないばかりか逆に性能が低下する場合がります。

原則、順番を飛ばす場合は飛ばされる工事に関しては問題が無いか以後の工事の効果で目標値をクリアできる場合となります。

屋根の軽量化は費用が高額ですが補強効果も大きい補強工事なのですが1番に関しては問題が無く、2番に関して目標値の5〜7割程度の性能を確保していないと効果が発揮できません

また、基礎が最後になっている事が意外かも知れませんが、基礎の補強は大規模な工事になる事が多く費用がかかる割りに効果が薄いと言えます(倒壊防止に主眼を置いた場合です)。基礎に問題が有る分を上部構造体(1階土台より上の部分)の強度を割り増しする事により、大地震時の建物の倒壊に対しては備える事が出来ます。(地震後も建物を使い続ける場合は補強が必要です。)

さて、今回の場合、経験から申しますと、まずは壁の配置バランスを取りながら、壁の新設または強化を行いつつ強化した部位には金物補強を行う事になります。

おそらく、壁は土壁と考えられますので「弱い壁」に該当しそのままでは金物補強の効果が出にくいと考えられます。

既存の土壁に構造用合板を貼り耐力壁を強化した上で建築基準法に定められた基準に従い構造用金物を設置し既存壁の強度を耐力壁全体の配置バランスを取りながら補強します。

このように基礎から上の部分を固める事で、地震の際にたとえ基礎から建物が外れてしまっても少なくとも建物の倒壊だけは防ぐ事ができ、建物から避難する為の十分な時間を確保することができます。

また、追加で屋根瓦の葺き土を下ろす軽い屋根仕上材料に葺き替えるなど屋根の軽量化対策をする事により必要な壁の量を減らし、場合により工事箇所数を減らすことが出来ると考えられます。床下に関しては根がらみを設置する程度でまずは考え予算に余裕があれば土間コンクリートによる玉石の固定と基礎の追加を検討します。 

最後に、工事を依頼する場合は補強後の建物の耐震性能を再評価可能な業者に依頼するのが絶対条件となります。

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