バリアフリー住宅を考える



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 バリアフリー概論 

最終更新 2005.5.25

「バリアフリー」の一般的な意味

最近、バリアフリーという言葉が世間に浸透してきました。これは、障害のある人や高齢者が社会生活をしていく上で建物内の段差など、物理的な障壁(バリア)となるものを除去するという意味で使われ始め、現在では広く社会的、心理的なすべての障壁の除去という意味で用いられています。

しかしながら、住宅販売・建築の現場では、階段の手摺の設置(建築基準法で義務付け)と和室と他の部屋との段差解消バリアフリータイプのユニットバスの使用程度のことで「バリアフリー住宅」と言っているようで、さらに住宅金融公庫の仕様でもあと階段の角度をゆったり取る程度のことを追加すれば「バリアフリー住宅仕様」と言う事になります。

20年前ならこの事自体でも賞賛に値する内容でしたが今では最低限これだけの事はやって当たり前となっています。

住宅の業界では様々なキャッチコピーで住宅を販売していますが、ここ最近は行政サイドが定めた最低限の基準に適合させるための仕様をこっそり「売り文句」にしているケースが数多く見受けられます。もしバリアフリー住宅を真剣に考えるなら、その答えは「手摺の設置・段差解消」の先にあるものです。


住宅と「ユニバーサルデザイン」

さらに、近年すべての人が地域社会で生活することを目標とする「ノーマライゼーション」の精神に基づき、「ユニバーサルデザイン」という考え方が発展してきました。 バリアフリーとは、もともとあったバリアを取り除くことで、ユニバーサルデザインは、能力に係わらず最初から、すべての人が使いやすいデザインという考え方とされています。 しかしながら、すべての人が使えるということは非常に難しいので、「一人でも多くの人が使えるようにするためのデザイン」と解釈されています。

しかし、若干気になるのは不特定多数が利用する公共建築物ならまだしも、ある程度使用者が限定される個人的空間である住まいが誰でも使えるデザインである必要があるのかと言う疑問もあります。誰にでもかろうじて使えるデザインよりそこに住む人にフィットするデザインの方がよいのではと感じます。

確かに不特定多数に向けて大量生産される工業製品にはユニバーサルデザインの考え方は重要ですが、その考え方を中途半端に住宅に適用した結果、一昔前の「障害者対応=車椅子対応」のように「バリアフリー対応=手摺の設置・段差解消」といった単純な解釈に一般化されてしまい、住宅の既成品化の流れのなかで「手摺の設置・段差解消」だけで住宅のバリアフリー化が終わると考えられているのが現状に思えます。

実際の障害のある人や高齢者の住宅改修の現場では家を使う方々の障害の程度や状態今後の症状の変化はもちろんその方の生活のスタイルまできめ細かく考慮し医療・福祉関係者の意見も聞きながらその方に最も合った設計をします。たとえば手摺にしてもその設置位置や高さ、棒の太さなど実際に使用者・医療・福祉関係者・設計者が現場に集まり検討が必要になります。

一般的な「手摺の設置・段差解消」のバリアフリー住宅は健康で活動能力の高い高齢者や障害のある人を想定したものです。きめ細かい対応は、まだ住宅の使用者が若く健康な状態ではなかなか想定しずらい面もあり住宅供給側から「バリアフリー仕様住宅です」といわれて「手摺の設置・段差解消」以外の説明がなっかた場合、その先の活動能力が低下した場合のしきめ細かい対応が必要になった状態を想定していないと思ってよいでしょう。


きめ細かい「バリアフリー」住宅への配慮

先に、活動能力が低下した状態は想定しにくいとは言いましたが、実際はある程度は想定できます。

例えば手摺は正確な取りつけ位置や高さは想定できませんが、住宅の中でどの部分に将来必要になるかは大まかに想定できます。問題はその部分に手摺を支えるだけの強度があるかどうかです。日常でもタオル掛けを壁にネジで留めたらネジごと抜けたといった事をよく経験されると思いますが、人間の体重を乗せる手摺が抜けると大変です。これは壁の中にネジを支える下地が無いためにおきることですが、このような壁に手摺をつける場合は壁の補強が必要となり、たかだか手摺の取り付け工事がおおごとになってしまいます。

また、トイレでの排泄や洗面の際に介助が必要になるケースが多々想定されますが、その場合は介助される方の側方にスペースが必要になってきます。この場合トイレと洗面所を隣接して計画して介助が必要になった時は一体に使うとか、あらかじめトイレを広く取っておくと言うこともできます。この場合トイレと洗面所の間の壁を取っても家の強度に影響しないようあらかじめ構造計画を立てる必要がありますし、トイレを広く計画する場合はあらかじめ部屋の片方に便器を寄せておか無ければ後で便器を移動することになります。

このように細かく想定できなくとも介助が必要になった時の改修工事の経済的負担を軽くする配慮は新築時に可能です。また、「住まう事の豊かさ」といった心理的要素に対するニーズは健康な方も障害のある人や高齢者も同じです。長い目を持って住まう事を真剣に考えればその家は自然に「バリアフリー住宅」になるはずだと思います。


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