最終更新 2003.4.30
シロアリは建物の害虫として最も気になる存在です。巷では害虫駆除の営業さんが駆け回り様々な予防対策を薦められる事も多く「本当の所はどうなの」と疑問に思っておられる方が多いようです。
さて、日本では、ヤマトシロアリ、イエシロアリ、ダイコクシロアリ、アメリカカンザイシロアリの4種類が主に建物に被害を与えますが、その中でもヤマトシロアリとイエシロアリは日本各地に広く分布しており最も被害の多い種類です。ダイコクシロアリは奄美大島以南と小笠原諸島に生息し、アメリカカンザイシロアリは北米からの輸入材や輸入家具とともにしばしば発見されその被害が全国で報告される移入種です。
ヤマトシロアリ、イエシロアリは土壌性のシロアリで、大抵の場合、人がそこに家を建てるずっと以前から元々土の中にすんでいました。一般にいう「シロアリ予防・駆除」はヤマトシロアリ、イエシロアリを対象としたものです。
シロアリは、アリやハチと同じくコロニーと呼ばれる一つの集団を作り社会生活を営んでいて、コロニーの中には、女王、王および副女王、副王からなる生殖階級、職蟻階級および兵蟻階級などがあり、それぞれにはっきりした役割分担があります。
また、シロアリは1年に1度いわゆる群飛を行い、新しい成虫(羽アリ)が巣から飛び出します。シロアリの被害に気付くのは多くがこの時です。
羽蟻の発生時期は、3月〜5月の昼間、特に午前中に黒色の羽アリが出た場合はヤマトシロアリで、5月〜7月の夜電灯に黄褐色の羽アリが集まった場合はイエシロアリと一般に言われています。
シロアリの職蟻(働きアリ)や兵蟻(兵隊アリ)は基本的に名前の通り白い色をしていてその点でアリとは容易に見分けられます。しかし、シロアリの羽蟻はアリの羽蟻と見分けが難しく若干の羽の形の違いなどで見分けます。
シロアリは光や空気(乾燥)を嫌うため、普通土中や木材中に隠れて活動します。また、土や自分の排泄物で加工した特別なトンネル(蟻道)を作りその中を行き来し光や空気を避けて活動するため木材が被害を受けた場合でもその表面だけ残して内部だけが食い荒らされているのが特徴です。
ヤマトシロアリ |
餌となる木材が常に湿っていることが必要といわれていて、その被害は風呂場、台所、洗面所、トイレなどの水廻りに多く発生します。また雨漏りや結露などによって水分が補給されればそれ以外の場所でも生息可能です。 加害している場所が巣になっていて、一つのコロニーの固体数は数万から数十万匹。 シロアリによる加害部分を特定できればその部分に重点を絞った対策が可能で床下での作業性がよければ比較的駆除は容易といえます。 |
イエシロアリ |
大きな特徴として自分で水を運びながら加害するため、被害は建物の足元廻りにとどまらず被害は2階や屋根といった建物全体に及びます。 地中などに作った巣を中心に最大100mの範囲で活動を行い、個体数は最大数100万匹にも及びます。 駆除は建物内部のみならず地中の巣を特定して行う必要があります。 巣を残しておくと短期間で再度加害を受ける可能性が高く駆除に時間を要することがあります。 |
ダイコクシロアリ |
この2種類は乾材シロアリと呼ばれ水が全く供給されない乾いた木材中で加害活動を行ないます。 比較的少数の固体数(最大で数千匹)で木材に深く穿孔して活動しているため、発見が非常に難しいシロアリです。 駆除方法としては建物全体をシート等で覆い薬剤を浸透させる燻蒸などの方法がありますがコストが高くまた予防効果も少ないため再度加害を受ける可能性があいます。 そこで通常は手間が掛かりますがコロニーを丁寧に探し出し個別に駆除することになります。 |
アメリカ カンザイシロアリ |
ヤマトシロアリとイエシロアリの分布図
最終更新 2003.4.30
アリやハチといった昆虫に見られるようにシロアリもごく単純な遺伝的習性に従って活動します。
シロアリは「餌にたどりつくまでひたすらかじりすすむ」といった単純な習性を元に行動し、具体的に「あそこに餌があるから餌を目指して進む」のではなく、「かじり進んでいるうちにたまたま見つけた餌にかじり付く」訳です。
ですからたとえ家の下にシロアリがいたとしてもシロアリ自身は自分の上に家があることに気付きません。シロアリが家という餌にありつく為には家の側にシロアリを家に誘導する要素が必要になってきます。このシロアリを誘導する要素を作らない様注意を払い設計することがシロアリ予防の第一条件になります。
シロアリを誘導する要素には様々な物があります。古い家屋はトイレや浴室の土間下などに土が入っているケースが多く他の部分より土が床に近い部分まであり、ここを通って家屋に侵入されるケースが多々あります。
現在では床組みのトイレやユニットバスが主流となり、シロアリに侵入されるリスクの少ない構造となってきましたが玄関などは現在でも土間ですので用心が必要です。
また、シロアリは餌で無いものもかじります。紙、布、断熱材などの樹脂製品はもちろんのこと、モルタルやコンクリートもかじります。餌にたどり着くまでその力強い顎で障害物に穴をあけ進んでゆき、コンクリートのベタ基礎と言えども突破される可能性は無いとは言えません。
ベタ基礎を突破したり、地表に出たシロアリには更なる障害が立ちふさがります。それは光や空気(乾燥)と言った環境条件です。シロアリは光や空気(乾燥)を嫌うためそれらから身を守るシェルターである蟻道を形成しながら進み土台や束といった餌にありつきます。
蟻道は特に目的をもって伸びるわけではありません。シロアリは餌に向かって蟻道を伸ばすのではなく「でたらめ」に蟻道を伸ばして行きます。「でたらめ」に伸ばしているうちに何か「沿う」物が有るとそれに沿って蟻道を伸ばします。例えばそれは基礎の立ち上がりの出隅や入隅だったり、水道管・ガス管だったり、クモの巣だったりです。
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