免震住宅の疑問



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 免震住宅の仕組み 

最終更新 2004.6.30

元々大規模の鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)の建物に使われていた免震構造が住宅にも適用されるようになって来ました。住宅用の安価な免震装置の開発(とは言っても住宅1軒で4〜500万円UP)で本格的に各地にモデルハウスが出来ている様です。

免震構造住宅では基礎を2重にしてその間に免震装置を挟み込みます。免震装置には色々なタイプが有りますが簡単に言うと、建物を鉄球の上に乗せ左右に転がる様にして、さらに転がり過ぎない様ゴムで引っ張るような仕組みです。さらに地震時の住宅の揺れをいち早く減衰させるオイルダンパー、地震によって住宅の位置ズレが万一発生した場合に元に戻す電動モーター式の復元装置などなどを組み込みます。

この免震装置は地震時に建物を横に揺さぶる力(水平力)を1/4程度に低減します。震度階で言うと、震度7の地震なら震度4にといった具合に3段階程度の低減効果があるそうです。

この地震の水平力低減効果で最も顕著に非免震住宅との違いが現れるのは建物内部の家具の挙動でしょう。阪神・淡路の地震の際、住んでおられた方の話を聞くと「地震のときテレビが何メートルも水平に飛んできた。」とか「カウンターで飲んでいたらグラスが壁まですっ飛んだ。」などと冗談まじりで話してくれますが、テレビやグラスが吹っ飛んだのは本当のはなしです。

実際、地震時、構造的な被害は少なかった新しい戸建住宅でも、屋内の家具の転倒によるケガの被害や実質的な生活機能が一時停止してしまった事例が多く報告されています。

現状では通常、免震工法は、大地震時でも家具・什器の転倒を防止できる事を目的に設計されています。この為、美術品収蔵庫やコンピューターサーバー室、病院といった建物内部に収納される物品が高価値な場合や揺れに対する安全性を高レベルで求められる場合に多く利用されています。

(建物の倒壊を防ぐ事が直接の目的ではないと言う事です。現に免震構造の住宅でも建物本体は耐震設計を行うのが一般的です。これは住宅などの小規模建築物の場合では耐震設計は低コストで実現可能だからです。)

住宅の場合、家具等の転倒防止対策としては家具を壁面等にビスなどで固定したり、造付けの家具納戸を設け家具を集める等の対策でかなり実現出来ますが美術品等の高価値の品物など転倒により破損しては困る物品を収蔵している場合などは免震構造の建物とするメリットは大きいといえます。

 免震住宅の疑問 

最終更新 2004.6.30

良いことばかりの免震住宅ですが、住宅に適応するには若干の疑問が未だ残っています。

その大きな疑問のひとつが「風」の問題です。「風」と言うと驚かれるかも知れませんが小規模の建築物、特に木質系の建築物の場合、建物の強度の問題を論じる場合には「風」の話は避けて通れません。

建物の構造設計をする場合、建物を横に揺らす力(水平力)に対しての検討を行いますがこのとき検討するのが「地震力」と「風圧力」です。

「地震力」と言うのは文字通り地震が建物を揺らす力です、「風圧力」は風が建物を揺らす力の事です。実は小規模な住宅の構造設計ではこの「風圧力」の方が「地震力」より大きな力になり、地震ではなく風に対抗するために筋交いなどの耐力壁を設計すると言った事が多々あります。それだけ風の力は思ったより大きいと言うことです。

さて、この事が免震構造住宅にどういった影響が有るかと言うと、それは、「船酔いになるかも」と言う問題です。免震構造住宅はそもそも自分を揺れ易くする事によって地震時の水平力を低減しますが、この揺れ易い作りが仇になり非免震住宅では揺れる事の無い風でも建物が揺れ始めます。この揺れに対する感じ方は人それぞれなのでなんとも言えませんが台風などで風が吹き続けると建物が揺れ続ける事も考えられます

最近では、様々な制御方法で免震装置を固定し震度4、5クラスの地震で自動開放する様です(それ以下の地震では建物が揺れることになる)。しかし、実際の風の影響は複雑で例えば50m/sの強風までOKと言われても、建物の受ける風圧力は簡単に言うと「風圧」x「風を受ける面積」ですから面積が2倍になれば風圧力も2倍となります。そのため建物の立面形状の影響を受け易く、その当たりの対応を確認する必要はまだ残っていそうです。(単純には制御装置の設置調整という事になるのだろうけど、大きな風圧力に対抗できる様に設置された固定装置は地震の際、有効に外れるのだろうか。)

また、もうひとつの注意点は、免震装置の動作クリアランスの問題です。免震構造住宅は地震時に内部の揺れは減りますが、外から見ると非免震構造住宅に比べ大きく揺れているように見えます。建物が元に有った位置より20〜30cmは横にとび出す事も考えられます。このため免震工法の建物の周囲50cmは人が侵入できない様にする必要があり、また障害物も設置不可で建物の周囲は植栽程度にしか利用できません。建物のすぐ傍に人がいる時に地震が起きるとその人は建物に弾き飛ばされたり、建物と障害物の間に挟まれたりする可能性もあります。

さらに、建物が大きく動くことから、免震の建物に接して建物を増築する事が難しく原則増築は別棟となります。

免震構造住宅は有望な技術ですが、今現在、発展途上の技術でもあります。今後は免震装置がフランチャイズ販売され専門技術者以外の人が免震構造住宅の提案をする場合も考えられます。免震装置を導入する場合はしっかりとメリットとデメリットを確認した上で慎重に導入を検討されることをお勧めします


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