最終更新 2003.11.10
家が下がって傾いたと言う話は意外とよく聞きます。リフォームなどで床下に潜った際にもかなりの頻度で基礎にヒビが入っているケースを見受けられ、これら地盤の不同沈下が原因と思われる建物の破損は昭和の後期に造成された住宅地などでよく見られますが、これは当時は住宅建築時に地盤に対して配慮される事が無かった為です。最近では建築時に地盤調査を行うことが一般化してきましたが、地盤調査を行わずに「ベタ基礎だからOK」とベタ基礎の性能を過剰に信頼して施工してしまっているケースも多いようです。
そもそも地盤とは建物の基礎を支える地面のことですがこの地面の地下では何重もの土質の異なる層になっています。例えば砂の層や粘土の層、それらが混ざった層、岩や火山灰の層などと言った具合です。これらの層ごとに土の性質が異なり、建物を支えるのに適したものから、何らかの対策が必要なものまで様々です。
この建物建築予定地の地下の様子を探るのが地盤調査で、調査の結果を元に基礎の設計や地盤の補強等をおこないます。
一般に、地盤と基礎のトラブルでよく耳にするのは、「不同沈下」と「液状化現象」です。
普通、土地の上に建物を新たに乗せるとその重みで程度の差こそあれ建物は沈下します。既存の建物があった場合でも新たに建てる建物の重さが以前の建物より重ければその増えた重みの分だけ沈下します。この沈下が均等であった場合は建物に構造的問題を生じる事は有りません。不同沈下とは建物全体が均等に沈下するのではなく、不揃いに沈下を起こすことを言います。不同沈下によって建物が斜めに傾いたり基礎が折れたりすると建物の構造を支える部材が歪み変形するため構造強度が著しく低下します。
通常は著しい構造強度の低下が起きる前に、家が傾いた為、ドアや窓が開閉できない、壁にヒビが入り隙間風が生じる、部屋の中で平行感覚が狂いめまいを生じるなど精神的ストレスや日常生活上の問題が生じたり、ヒビ等から建物内に雨水が進入し躯体が腐食し建物の寿命が短くなります。
不同沈下のパターン
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建物全体が傾く不同沈下
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建物の基礎の「立ち上がり」の部分の高さが十分に有り、また十分に鉄筋が配筋されていて基礎の剛性が高い場合には建物が変形せずに沈むケースがあります。 この場合、建物自体の沈下による破壊は少なく補修も比較的簡単。 (建物の補修が簡単というだけで建物の傾きを取るのは大規模な工事です。) |
建物の一部が傾く不同沈下
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基礎の強度不足で基礎が折れ建物の一部分が大きく沈下します。上部構造物の変形も大きく大規模な補修が必要になります。 地盤の一部が極めて軟弱であったり、建物の2階建て部分など建物の一部分の重さが大きい場合にこのような沈下をおこします。 |
日本建築学会の資料より
↑建物の一部が沈下し折れた基礎。犬走りにもクラックが入っている
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↑建物内部の基礎にもクラックが有る
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傾斜・変形角と発生する問題
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傾斜角(rad.)
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居住者の意識
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変形角(rad.)
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建物の障害の度合い
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建物の状態
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5/1000
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傾斜を感じる
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3/1000
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損傷の発生
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窓に隙間ができガタ付く
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5/1000
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構造的障害が発生し始める
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6/1000
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不同沈下を意識する
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8/1000
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構造的許容上限値
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物が転がる
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(変形制限値)
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8/1000
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傾斜に対して強い意識
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めまい等の発生
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表より、6/1000(rad.)が補修をせずに我慢できる(生活にさほど支障がでない)限界値と考えられる。
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日本建築学会の資料より
不同沈下が新築後5年程度の時間をかけてゆっくりと沈んで行くのに対し、地震の時に一瞬にして地盤の建物を支える力が失われ、建物が沈むのが「液状化現象」です。主に地下水位の高い砂質地盤で発生します。
阪神大震災では、海沿いの埋立地で大規模に発生し数mも地盤が沈下しました。高層の集合住宅地でしたが杭基礎で地下深くの支持地盤から建物が支持されていたため地盤沈下の影響は受けず、はたから見ると地面が下がった分逆に建物が数m持ち上がったように見えました。
「不同沈下」や「液状化現象」の危険性の有無は地盤調査で確認できます。いったん「不同沈下」や「液状化現象」が起こり建物が損傷すると大掛かりな補修工事や建て直しといったことが必要になり、多額の費用が掛かることになります。地盤調査の費用は小規模の建物で有れば総工事費の1%以下です。その程度の出費でですから新築前にぜひ実施することをお勧めします。
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