欠陥住宅と工事監理



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 欠陥住宅はなぜ生まれる? 

最終更新 2003.10.15

相変わらず「欠陥住宅」の話がTV等で紹介されています。たいていは「悪徳建築業者」にスポットが当てられそれを建築の専門家として設計士(建築士)がバサバサと切っていくという内容のようです。悪徳業者「建て主は無知だから手を抜いてもわからない。」「安くて良い家なんて出来る訳が無い。」、「欠陥住宅にしたくなかったら建て主はもっと勉強しろ。」などと無茶苦茶な事を言いたい放題を言っています。

欠陥住宅の生まれる原因には様々な理由有りますが、,最も根本的な事は住宅建築の発注形態の特殊性によるものが大きく感じます。建て主が住宅を発注する場合、依頼先の候補は「ハウスメーカー」、「中小不動産住宅販売業者」、「工務店」が真っ先に上がりますが、住宅より少し大きな物件ではまず「設計事務所」となります。

この中で最も欠陥住宅が発生する可能性を多くはらんでいるのが「中小不動産住宅販売業者」を中心とした発注システムです。「中小不動産住宅販売業者」とは主に10数戸規模のミニ宅地開発を中心に商売を行っている業者です。これらの業者は販売力を出すために、ハウスメーカー並の設備機器や内外装仕上げの仕様をうたい文句にしつつ、ハウスメーカーより割安感を出すために販売価格を下げてきます。

しかし元々「不動産住宅販売業者」は自社では建築工事を行わないのが普通で、「不動産住宅販売業者」が自社で工務店の看板を上げていてもそれはペーパーカンパニーという事が多かったり、建築工事の技術・知識や工事のコスト管理のノウハウは乏しい上、工事の工夫で正当に建物原価を下げるのではなく、実際に工事を担当する工事業者に発注する単価を一方的に下げ、自社の利益上乗せ分には手をつけずに、工事業者に値下げ分を負わす形が一般的に行われています。

「不動産住宅販売業者」の下請け工事業者は一般的に自社営業力に乏しく工事単価を下げられても工事を受けるほか有りません。少ない工事代金の中で利益を確保するためには、良心的な業者でも、最低限レベルの施工で工事を進めることになります。特に住宅の建て主さんから見えない部分の工事でその傾向が顕著に現れ、例えば地震に対して家を守る「耐力壁」の量も法律で定められた最低限の量ぎりぎりで施工する場合もあります。

最低限の量ですので仮に1箇所でも施工不良が有れば、「耐力壁」不足の欠陥住宅となる可能性があります。

木造新築の「耐力壁」1箇所の施工代金はせいぜい6千円〜1万円程度のことです。

この事を建て主さんに説明すれば誰でももっとふやしたいと思うのが普通ですがそんな説明は「不動産住宅販売業者」はしませんし、そもそも工事にはノータッチですので、建て主不在のまま工事は進む事となります。

この構図は設計に関しても当てはまります。建て主さんは「不動産住宅販売業者」に「一級建築士の先生です」などと紹介される設計士に間取り(平面図)や建物の姿図(立面図)の提案を受けますが、この間取りや姿図が建て主さんとの打ち合わせで決まればこの設計士さんの仕事はほとんど終わりです。あとは役所に書類を出すだけで現場に足を運ぶことはまず有りません。

彼らも工事業者と同じく「不動産住宅販売業者」の下請けとして設計を受け、その費用はパソコン1台分くらいの値段です。現場に行く費用は全くありません。彼らは、役所に出す書類にその工事の設計者・工事監理者として署名・捺印しなければなりませんが、現場が下手をやったり、行政パトロールで不具合が見つかり役所から電話が入る事が無いのを祈りつつ判を押している状態で、欠陥住宅防止の何の役にも立っていないのが彼らの姿です。

他の欠陥住宅の原因には、普段このような利益の少ない状況で施工している工務店に、建て主から直接新築依頼が舞い込むことがあると、悪徳工務店の場合、下請け時と同じような内容の工事で費用を浮かし自社の利益を不当に確保するケースもあります。

「ハウスメーカー」も自社の利益確保のため下請け工事業者にコスト削減は迫りますが、同時に自社ブランドを守る為に手抜きをしないよう厳しく監視します。「ハウスメーカー」の発注数は「中小不動産住宅販売業者」1社の発注数と比べ物にならないほど多いため、過酷なコスト状態でもかろじて薄利多売が成立しています。「中小不動産住宅販売業者」の発注規模では大量発注のメリットは皆無なのです。


 欠陥住宅と設計士の責任 

最終更新 2003.10.15

欠陥住宅を防ぐ方法は実は簡単で、正式に設計士(建築士)に工事監理を依頼すれば済むことです。

ただ、ここで問題なのが「悪徳建築業者」の裏にいる「無責任設計士(建築士)」の存在です。

と言うのも、欠陥住宅と言えどもたいていは「建築確認」という書類は行政(役所)に提出してあり(書類の内容とは全く違う建物が建っているケースもあるが・・・)その書類の中には設計者と工事監理者の名前を記入する欄が有ます。設計者と工事監理者欄には設計士(建築士)の名前が書かれていますが、この名前は意味無く書かれているのでは無く設計者は「その者の責任において、設計図書を作成した者」であり、工事監理者は「その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認する者」となっていて、設計者と工事監理者として記名した者は建物に対して当然の事ながら施工者と共に責任を負う立場なのです。

本来、適切に工事監理を行ったならば「欠陥住宅」にはならないはずなのに「欠陥住宅」が出てくるのは書類に名前を書いても実際には全く監理しない「無責任設計士(建築士)」がいることに他ありません。彼らの事を一般に「申請屋・代願屋」などと呼ぶ事もあり、主に宅地開発や造成、住宅の建築確認などの申請手続きの代行で生計を立てており、世間一般でいう「設計士」のように建築技術者として仕事をすると言うより法律手続きの専門家といった感じです。

この「申請屋設計士(建築士)」は住宅業界に多く、自らが法手続きをした物件でも建築現場には全く顔を出さず、現場から問い合わせがあっても「監理の費用は元請から貰ってないから現場で何とかしてくれ。」と言った具合です。

また、最低限の法律に関係する部分の現場監理はする「申請屋設計士(建築士)」でも、彼らの雇い主は不動産業者や工務店であるため、建て主ではなく雇い主の立場を最優先に考えます。若干の手抜き工事に対しても目をつぶる事がしばしば行われているケースもあるようです。不動産業者や工務店の不利な判断をすると「申請屋設計士(建築士)」は引き続き仕事を貰えなくなりますので建て主優先ではなく、不動産業者や工務店が優先になるわけです。

以上のようなことから、欠陥住宅を防ぐにはしっかりした設計・監理業務を行う設計士(建築士)に建て主さんが直接設計を依頼するのが最も確実な方法といえます。

適切に設計・監理業務を行う設計士(建築士)と申請屋設計士(建築士)の見分けは簡単です。通常は住宅をしっかりと設計すると最低でもA2の用紙で20〜30枚程度の図面が必要となってきますが、申請屋設計士(建築士)は2,3枚程度の建築確認手続きに必要な図面を作成した時点で設計を終了します。これはしっかりと設計・監理業務を行う設計士(建築士)の基本設計に当たるもので、普通はその後実施設計に入るわけですが、申請屋設計士(建築士)は実施設計を行いません。

設計(代書)を請け負う申請屋設計士(建築士)の仕事は住宅の大量生産・既製品化の中で生まれてきたものです。建て主一人一人に合った「納得の家」を建てる設計・監理とは全く次元の違う話なのです。

※このHPでは「設計士」と言っていますが建築の設計士の事を正式には「建築士」といいます。建築士には設計・監理できる建物の規模・構造により「1級建築士」・「2級建築士」・「木造建築士」の3種類があります。ちなみにこのHPの管理人は「1級建築士」です。


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