最終更新 2005.11.14
先日隣の家から、おまえの家は敷地いっぱいいっぱいに建てられている。屋根を切れと言われました。
確かに、法律上隣の家との境界線か50cm以上離して立てなければならないとありますが、我が家は、築41年にもなる家です。
今更そんなことを言われても…という感じです。ましてや、私の近所では家々が密接して建っており、屋根を切ってもたぶん規定の50cmは難しいと思われるのですが…。
どんなものでしょうか?やはり、屋根を切るか建て直さなければならないのでしょうか?
建築基準法では、第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内の土地で条例で定められた場合や地区協定などの取り決めのある場合を除き、敷地境界から建物をどれだけ離しなさいという規定は有りません。
今回の50cm建物を離しなさいという法律上の根拠は「建築基準法」ではなく「民法」の規定が根拠であり、その民法では次の様に規定されています。
民法 第234条 (境界線付近の建築の制限)
第1項
建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。
第2項
前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。
民法 第235条
第1項
境界線から一メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。
第2項
前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。
民法 第236条 (境界線付近の建築に関する慣習)
第1項
前二条(234条、235条)の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。
民法234条1項では建物を建てる場合は敷地境界線から建物を50cm以上離して建てるよう規定しています。
続く2項では、隣地の所有者の権利を規定していて、敷地境界から50cmより狭い間隔で建物を建てようとした場合には、その隣地の所有者は、工事を中止させたり建築計画を変更させる事ができます。
ただし、工事が始まって1年が経過した場合や、建物が完成した後では、工事を中止させたり計画を変更させる事は出来ず、敷地境界から50cmより狭い間隔で建物を建てた事により生じた損害賠償の請求のみできるとされています。
民法236条では、50cm以上離して建てない事が一般的な場合はその習慣に従い50cmの規定は適用しないとしています。
また、建築基準法 第65条(隣地境界線に接する外壁) では
「防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。」
とされており、この規定を民法236条の異なる習慣を定めた規定として捉え、防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては民法の50cmの規定は適用しないのが通常です。
このように、民法の「50cm以上離して建てる」という規定は絶対的な規制ではなく、工事を行う際、隣地の所有者と協議し合意すれば、狭くすることもできます。
そのため、この規定は「50cm以下に近づけて建物を建てる場合は隣地の所有者の協議し同意を取りなさい」という意味として建築関係者の間では扱われています。
ところでこの「50cm以上離す」場合、建物のどこから50cmを計るのかというと、通常は屋根ではなく建物の外壁面となります。また建物と一体に造られたバルコニー等は外壁面の延長として捉え、アルミ等で造られた下に柱の無い持ち出しバルコニー等は建築基準法では「庇」と同じ扱いですので、外壁面とは捉えないのが一般的です。
今回の場合が新しく建物を増築するというのであれば隣地所有者は工事の中止や計画の変更を求めるのは有りうる話ですが、建築から41年間経っている建物の一部を切り取れというのは少々無茶な話に思います。
建築当時にお互いの合意があったかどうかは今となっては定かではありませんが、41年間の時間は「双方合意」と考えるには十分な時間とも言えそうです。
しかし、建物の間隔が原因で新たに何らかの問題や損害が発生した場合は現実に可能な範囲で、お隣さん同士、円満に問題を解決出来るように互いに譲り合える妥協点を探し、よく話し合うことが大切です。
(ただ、個人的な意見としては、屋根を切り落とせという話は過大な要求であり、譲歩するにしても、「将来に建物を建替える際には外壁面を50cm以上敷地境界から離して建築します。」とった内容の念書を交わすあたりが落とし所ではないかと考えます。)
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