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Q_029 鉄筋コンクリート基礎のかぶり厚さ その1

最終更新 2007.12.13

べた基礎立ち上がり部分の鉄筋のかぶり厚さ不足の補修について教えてください。

現在上棟まで進みましたが、フック付きのたて筋の為、基礎立ち上がりのかぶりが3センチか場所によっては3センチ未満の状態がありまして、コンクリ打設の時は施工者より3センチあれば いいのでということで、2センチ台の所を直してくれるようにたのみましたが確認はしていません。

その後基準法で4センチということがわかりましたので、現在補修することになりました。補修箇所は耐力壁のある通りだけで良いでしょうか?

補修の方法にはどのようなものが良いのでしょうか?すでに出来上がっている基礎との接着はどうすればいいのでしょうか。

工務店では接着をよくするものを混ぜたモルタルを1センチ塗るとのことですがただ上に塗って接着して長年大丈夫でしょうか?はがれてしまわないですか?

また基礎外断熱の気密住宅の為、内部の基礎天にも全体に気密シートが敷かれています基礎の乾燥がしずらくなってしまうと思うのですが、何か題はないでしょうか?よろしくお願いいたします。


A_029

まず、鉄筋コンクリート造基礎の鉄筋のかぶり厚さのは何の為に必要かという話になりますが、建築基準法では鉄筋コンクリート造のかぶり厚さについて以下の様に規定しています。


建築基準法施行令 第七十九条  

鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは、耐力壁以外の壁又は床にあつては二センチメートル以上、耐力壁、柱又ははりにあつては三センチメートル以上、直接土に接する壁、柱、床若しくははり又は布基礎の立上り部分にあつては四センチメートル以上、基礎(布基礎の立上り部分を除く。)にあつては捨コンクリートの部分を除いて六センチメートル以上としなければならない。

2  前項の規定は、水、空気、酸又は塩による鉄筋の腐食を防止し、かつ、鉄筋とコンクリートとを有効に付着させることにより、同項に規定するかぶり厚さとした場合と同等以上の耐久性及び強度を有するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いる部材及び国土交通大臣の認定を受けた部材については、適用しない。


実はかぶり厚さに関しては主として3つの性能を満たす様に決められています。その性能ごとに必要な厚みというのは若干異なるのですが、基準法ではこれら全てを満たす最低基準として施行令79条であげている訳です。

さて、かぶり厚さの3つの性能とはどういうものかと言うと

 1) 構造耐力上必要なかぶり厚さ
 2) 耐火性能上必要なかぶり厚さ
 3) 耐久性上必要なかぶり厚さ

と言う事になります。それぞれを個別に見ていきますと、

【 1) 構造耐力上必要なかぶり厚さ 】

というのは、鉄筋とコンクリートの付着に関して必要なかぶり厚さで、これが少ないと鉄筋に力がかかった際に鉄筋にそってコンクリートがひび割れる付着破壊を生じる事があります。一般に鉄筋コンクリートに対する許容付着応力度は、かぶり厚さ=1.5d ( dは鉄筋の公称径 )を想定していますので、異形鉄筋D−13でしたら 19.5mmは必要という事になります。

【 2) 耐火性能上必要なかぶり厚さ 】

というのは、熱に非常に弱い鉄筋を火災の熱から守るためのかぶり厚さで、鉄筋が600度以下に1時間保たれる為には2cm、2時間保たれる為には3cmが必要であると言われています。ただ木造住宅の場合では基礎がこのように加熱される状況では上部の木構造体が焼失してしまいますのであまり関係がないかもしれません。

【 3) 耐久性上必要なかぶり厚さ 】

というのは主としてコンクリートの中性化に対するかぶり厚さです。

鉄筋コンクリートに使用する鉄筋を空気中に放置すると、錆びてしまいますがこれは鉄が酸化してしまうために起こる現象です。コンクリート中の鉄筋ではコンクリート内部が高いアルカリ状態に保たれている為、鉄筋に不導体被膜という薄い皮膜が形成され保護されています。

しかし、このコンクリートが年数が経つにしたがって大気中の炭酸ガスと化学反応をおこしアルカリ状態を失っていき、酸性へ傾く中性化が進むと鉄筋がさびて膨張を始め表面のコンクリートがはがれる現象が発生しコンクリート劣化の大きな原因の一つになっています。

中性化の進行度合いはコンクリートの調合によって左右されますが屋外部位では打設65年後で1cm〜3cmと言われています。これはコンクリートの置かれる状況によってかなり変わり、実際の予測は難しいと言われています。

今回の場合は最小かぶり厚さが2cm台という事ですので、1)に関しては辛うじてクリア、2)に関してはまあ無視して良いでしょう。そうなると今回問題となるのは、3)の中性化に関する項目と言う事になります。

コンクリートの中性化対策としては、仕上げ等で保護する、コンクリートの保護強化材を塗る、といった事になります。補修部位的には耐力壁の位置にこだわるよりも基礎外周部の外部側、次に内部側、最後に内部間仕切り壁の部分といった中性化被害が進み易い部位からという感じでよいのではと思います。外周部の基礎は外壁の重量を受けている上、比較的切れ目無しに基礎が連続する部位ですので重要な部位です。

尚、外壁外周部分の外側では通常巾木をモルタルで塗りますので、この仕上げがコンクリートの保護層として機能しています。

これは、仕上げによる保護という考え方ですから定期的に仕上げ部分を補修する必要があります。(コンクリートのかぶりで性能を確保する場合は朽ちるにまかせるという考え方ですね。)

ところで、基礎立ち上がり配筋の位置に関する誤差は1cm〜2cmの範囲で結構日常的に発生しています。
最近では16mmのホールダウン金物まで基礎に差し込まれますので仮に基礎巾12cmの場合13mmの縦筋・横筋を入れると残りは94mm、半分にすると47mmこうなると許容施工誤差は7mmとなってしまいます。このような施工誤差で鉄筋を施工するのは事実上不可能ですので基礎巾12cmの基礎にかんしては、かぶり厚さが確保できていない部位がかなり存在していると考えられます。施工誤差を考えると少なくとも13.5cm理想は15cm程度の基礎巾を確保することが重要です。

最後にコンクリートの硬化に関してですが、コンクリートは水とセメントが化学反応(水和反応)する事により硬化します。

ですから硬化には水が不可欠な為、コンクリート打設後の養生では水を撒いたりして乾燥を予防する事もあります。ですので気密シートの設置自体がコンクリートの硬化に影響があるとは言えないでしょう。

Q_030  鉄筋コンクリート基礎のかぶり厚さ その2 へ続く

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