地震対策と耐震補強(在来木造編)



トップページ > 気になる家の話題 > 地震対策と耐震補強(在来木造編)  [3.リフォーム時の耐震計画]

 リフォーム時の耐震計画  

最終更新 2007.11.21

リフォームを計画する場合も上の7つの耐震上の欠点を常に念頭におき、これらを部分的に改良するだけでなく建物全体で改良するためにはどうすべきかという総合的判断を保ち続けることがポイントとなります。

 
1) 屋根葺き材を軽い物にしたり、外壁材料を軽い物にして建物の重量を軽くする。また、耐力壁を増やしたり、壁倍率の高い耐力壁に改装し地震の水平力に対抗出来るようにする。
2) 壁の無い外周面に耐力壁を設置したり建物の4隅をL字に壁で固めるなどして建物の平面バランスを良くする。
3) 上下階の耐力壁の位置を一致させたり、下屋の2階隅柱の直下に柱を設けるなどして建物の上階から下階へ力がスムーズに伝達出来るようにする。
4) 耐力壁の筋交い端部や柱脚部を金物で補強し柱が抜けたり、床梁が抜け落ちたりしないように補強し、接合部の緊結を十分に行う。
5) 無筋の布基礎を鉄筋入りにしたり、礎石式基礎を鉄筋コンクリート基礎にしたりし基礎を丈夫にする。
6) 腐朽したり、シロアリの被害のある土台や柱を取り替え防蟻処理を行ったり、外壁の補修を行い土台や柱が腐朽しないようにする。
7) 屋根や2階床の下地を構造用合板を貼ったり、下屋の天井面に構造用合板を貼ったりして建物の水平剛性を高め建物の一体性を高める。

一般にリフォームを行う場合、リフォームの実施内容は次のように分類できます。

A) 建物の面積を増やさないで浴室や台所等の設備の改修、間取りの変更、個室インテリアなどの改修など既存の居室の内側の改装を行うケース
B) 屋根の葺き替え、外壁仕上げの改修等、建物の面積を増やさないで外回りの改修を行うケース
C) 1階部分を横に増築したり、新たに2階部分を増やす増築等を行うケース

などが考えられます。

A)のケースでは改装は限定的な部分だけにしか行われないため建物全体の耐震性向上につながらない事が多く、特に浴室や洗面所などの水廻りの改修は元々壁量の多い部分だけにそういう傾向が大きい。建物全体の耐震性能を向上させるためには、壁の少ない側の補強も同時の行う必要があります。

B)のケースでは建物全体の耐震性を向上させるのが最も容易な改修といます。ポイントは屋根及び外壁の下地をすべて構造用合板に張り替え、同時に金物等を設置する。また仕上げ材は軽量で乾式施工のものを選択します。

C)の場合は今有る建物の横に増築する場合と上に増築する場合とでは条件が大きく異なります。横に増築する場合は増築部分を耐震的につくるのはもちろん、建物の既存部分の弱い側の外周面の補強も行うように計画する必要があります。

また、上に増築する場合は1階の必要壁量が増加しますので増築部分を耐震的につくるのはもちろん2階外周面の直下の1階部分に十分な耐力壁をバランス良く設けるよう計画します。

いずれの場合も耐震改修計画を立てる場合は、まず既存の建物の耐震診断を実施する必要が有ります。


コストを考えた耐震補強の優先順位

耐震補強を行う場合、予算に限りがある事がほとんどです。そうなると上で書いた全ての補強を同時に実施する事はできません。また、最近○○のリフォームを終えたばかりで同じ所をまた耐震補強するのはもったいないというケースにも多々遭遇します。

補強工事の優先順位を確認するためには耐震診断を実施する事が大切です。耐震診断により、建物の耐震上の欠点が確認でき全体の補強計画が立てられる様になる上に補強後の建物の耐震性能を工事を行う前に確認することが出来ます。

また、建物全体の補強計画を立てられることから、補強工事を1期、2期というように分割して実施する事も可能です。


優先順位 1 【建物の耐力壁の配置バランスを改善する】

耐力壁の配置バランスが悪いと地震時に建物にねじれが生じ大きく変形し倒壊に至る場合があります。また、耐力壁の配置バランスの改善をしないまま屋根の軽量化や金物の設置等の補強を行っても弱点が残ったままですので十分な効果が発揮できません。

例えば、南面のみ著しく壁の量が少ない場合などの場合、他の面の点数が0.7点、南面が0.2点といった具合にバランスが崩れているとすると、この建物の得点は0.2点となります。屋根の軽量化を行うと得点が1.5倍になるとすると、バランスの改善をしないままでは建物の耐震性能は0.3点にしかなりません。

逆に南面に壁を増やし南面の点数を0.7点まで補強すると、この段階で建物の耐震性能は0.7点になり、さらに屋根の軽量化を行うと1.05点まで向上させる事が出来ます。

※例として示した計算は考え方を示す為に簡略化してあり実際の計算方法とは若干異なります。


優先順位 2 【小屋組・水平構面の補強】

水平構面の補強とは1階天井・2階床面、2階天井面の水平面を固め変形しにくくすることで地震時の水平力をスムーズに耐力壁に伝えられる様にする工事です。

木造軸組みの場合では火打ち梁を部屋あたり4箇所程度を設置します。2階に板貼床がある場合は施工時に天井を撤去する事が必要な場合がありますが、小屋裏からであれば比較的簡単な工事です。

また、小屋裏内部の補強(桁梁より上の部分)は耐震上あまり意味がありませんが雲筋交い等を設置しましょう。

費用としては10万円〜15万円(天井撤去・復旧費用が不要な場合)程度ですので他の補強工事実施時に同時に行うと良いでしょう。

尚、この工事単独では計算上の耐震性能の向上はほとんど期待できません、計算上では水平構面の剛性がある程度ある事が前提ですので補強を実施しておかなければ減点対象とされてしまいます。

尚、壁の補強工事と同時に行うことで効果は少ないですが耐震性能の向上が期待できます。


優先順位 3 【建物の耐力壁の総量を増やす】

現行の耐震基準は過去に比べ厳しくなっています。その為、古い建物は耐力壁の総量が不足している事が多く、配置バランスを取りつつ建物全体に量を増やす事で耐震性能を向上させることができます。

方法としては耐力壁の新設強化を行う事になり、筋交いの新設や既設の筋交いに構造金物を設置、耐力壁の柱の上下に構造金物を取り付る、構造用合板を壁に貼ると言った工事を行います。


優先順位 4 【建物の屋根の重量をへらす】

土葺きの瓦屋根等の場合、屋根の重量を減らす事で建物に必要な壁の量を減らす事が出来ます。この為、相対的に建物の壁の量を増やした事と同じとなります。

また、単独の工事で行える事が多く、屋根の軽量化は2期工事として分離する事もできます。

尚、耐力壁の配置バランスが悪いままで屋根の軽量化を行うと十分に効果を発揮することが出来ません。


優先順位 5 【基礎の補修や補強】

基礎の補修・補強は元々基礎が無い(又は玉石の基礎)場合や鉄筋の入っていない無筋コンクリート基礎の場合には建物の補強効果がある程度期待できますが、鉄筋の入った鉄筋コンクリート基礎の場合は工事費用に見合うだけの効果が期待できません。

基礎の補修・補強効果は上部の建物に強い耐力壁が設置された際に効果が現れますが、一般に古い建物の場合は弱い耐力壁が設置されている為、基礎の補強のみでは建物の耐震性能の向上は望めません。耐力壁の強化と同時実施が原則です。

また、不同沈下が発生している場合は基礎の補強では対応できません。地盤改良が必要です。

尚、シロアリ駆除業者さん等が勧めることの多い基礎の補修工事は建物の耐震性能向上という意味では効果はほとんどありません。基礎劣化による耐震性能の低下を防ぐ現状維持が主な目的です。


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