最終更新 2003.7.30
日本列島は比較的温暖で夏は高温多湿な気候風土にあり、昔から「住まいは夏を旨とすべし」といわれ通風に配慮した住宅が造られてきました。
建具は引き戸が主体で各室の仕切りには襖や障子が多く使われ隙間風等で気密性は良くはありませんでした。90年代初頭まで各ハウスメーカーは「高気密・高断熱住宅こそ健康、エコロジー住宅だ。」を売り文句に住宅を販売し、また各工務店などもその風潮に追従することになりました。
(※高気密・高断熱は今でも住宅には重要な要素ですがそれ以外にも考えなければならないことが今日では増えています)
建物の窓はアルミサッシとなり、各室は壁で仕切られ、壁や天井はボ−ドや壁紙張り、床はフロ−リングボード張りなど、新建材であふれ有害化学物質の放散量が増えるなか、建物全体の気密性は格段に向上し密閉された住まいとなりました。鉄筋コンクリ−トの住宅や集合住宅などではなおさらです。
ところが、住む人の生活意識や行動はなかなか変わりません。今までの生活習慣 もあり新しい住宅でも、室内で燃焼させる(解放型)石油スト−ブやガススト−ブを使用しているのをときどき見受けます。これは十分な換気を怠ると健康上大変危険なことです。
毎日の生活では快適な生活を維持するために防虫剤、防カビ剤、ヘアスプレ−、芳香剤など、その他多くの化学物質を当然のこととして使用しています。
それらは微量ながら常に住宅内に発散しつづけています。人間の呼吸や発汗によっても酸素 を消費し炭酸ガスや湿度が増加して空気が汚れます。日常生活の中で、無意識のうちに室内空気を汚染し、その空気を呼吸して身体に取り込んでいるのです。
最終更新 2003.7.30
便利で快適な生活を求め続けてきた現代の生活は、毎日の暮らしの多くの部分でさまざまな化学物質を利用し、生活の中で無意識のうちに汚染物質を身体に取込み蓄積をしています。
衣食については意識すれば軽減できますが、住まいは一度造ると後日の改善は大変困難です。
室内の空気汚染を防ぎ健康被害の影響を少なくするには、有害と思われる材料の使用をできるだけ避けることが必要ですし、また、十分な換気を心がけるなど以下の様な配慮が大切です。
適切な材料選択 | 基本は有害物質の含まれていない材料(できれば自然素材が望ましい)を使うことです。やむをえない場合には含有量の少ない材料を使用します。最近ではそのような材料が数多くでていますので、使用に際しては見本やカタログにより含有量を比較検討し条件にあう材料を選ぶようにします。 |
確実な施工と管理 | 適切な接着剤や塗料の種類、使用量を明らかにして、確実な工事を行なうようにします。揮発性物質が含まれる場合には放散が十分に行なわれてから次の工程に進むなど工事方法にも配慮をします。 |
適切な通風換気 | 効果的な換気ができるように窓の配置や間取りを工夫し住宅全体の通風に配慮します。各部屋の大きさや用途に応じた適切な換気量を確保し汚染物質が滞留しないようにします。できるだけ自然換気を主体とし必要に応じて換気扇を設けるなど、維持管理がしやすく合理的な換気計画とします。 |
生活全体の配慮 | 室内に設置される家具、什器、備品などの材料にも注意します。衣食に対しても化学物質や添加物をできるだけ避けるように心掛け、身体への汚染物質の蓄積を少なくするように配慮します。 |
最終更新 2003.7.30
住まいが「シックハウス」とわかった場合、深刻な場合は専門家や保健所に相談して汚染状況を測定してもらうとよいでしょう。
診断により原因物質を明らかにして、撤去や取替え、張替えなど、原因を取り除くための適切な対策を考えることが必要です。
軽度の場合は、改善策として次のような方法が考えられます。
換気の励行 | 窓を解放したり、換気扇により室内空気を強制的に換気する。 |
ベイクアウト | 高温の暖房により原因物質を強制的に蒸発散させ放出する。 |
空気清浄器 | 化学物質も除去できる性能のものを使用。 |
吸着材の設置 | 空気に触れる面積の大きい面状のものがよい、貼る面積により効果も変わる。 |
塗装 | セラックニスなど塗膜により原因物質の発散を押える。 |
表面の仕上げ材料に原因がある場合はいづれも一定の効果が期待できます。
(できれば仕上げ材料の取替えや張替えなどによる原因の除去が望ましいです。)
下地材にも原因がある場合は、短期間での完全な蒸発散は期待できないため効果が少なく時間がかかります。いずれも複数の方法を組合せて改善するのがよいでしょう。
また、日常生活ではいろいろな汚染源となる可能性のあるものは使わない、持ち込まないという生活上の配慮も改善や予防に大切なことです。
外気が花粉や粉塵で汚染されているといった特殊な場合を除き、最も有効で基本的な化学物質の低減化対策は換気です。換気を行い、室内の空気が十分に外気と入れ替われれば室内空気中の化学物質濃度は低減します。
しかし、夏場の暑い時や冬場の寒い時などに通常の換気を行うと、冷暖房エネルギーを逃がしてしまうことになったり、換気を十分に行うために窓や扉を開け放すと防犯上問題が生じることが有り、換気を十分に出来ないケースも見られます。
・ こまめに窓を開ける。
(特に、鼻や目に刺激を感じた時にはすぐに窓を開ける)
・ 換気小窓等の換気口を開ける。
(アルミサッシのガラス部分の加工で取り付けられます。)
・ 換気扇を設置する。
(冷暖房の熱を逃がしにくい熱交換型換気扇がお勧め。)
・ 換気扇を常時運転する。
・ 室内のドアを開けておいたりドアにガラリやアンダーカットを付ける。
(建物全体の換気に有効。)
・ 換気機能のあるエアコンを利用する。
・ 就寝時や留守にも換気する。
(換気せずに窓を閉め切っていると、その間に発生した汚染物質が蓄積して、室内の濃度が高くなることがあり、就寝時や留守の場合も、換気しておくことが理想的。)
ベイクアウトとは、揮発性の化学物質が気温が高いときに放散量が増加する性質を利用して、電気ストーブ(燃焼式のストーブではストーブが有害物質を出す。)などの加熱装置を用いて室内温度を上昇させ、30〜40℃に数日間保ち、内装建材等に含まれる揮発性の化学物質を室内空気中に強制的に放散させる方法です。
ある研究報告によると、竣工後2〜4ヶ月の新築住宅においてベイクアウト(約30℃、24時間〜72時間)を実施し、化学物質の室内濃度変化を測定した結果、ホルムアルデヒド濃度が約23〜52%減衰し、加熱温度を高くするとその効果が増大したという報告もあり有効な手法です。
ただし、過度の加熱による内装建材や家具・什器の損傷には注意が必要です。
また、ベイクアウト後において、低放散量の建材に再付着したホルムアルデヒドや揮発性有機化合物の放散により、一時的に放散量が大きくなる可能性が示唆されてい、ベイクアウト直後の徹底した換気の必要性が指摘されています。
これまで空気清浄機といえば、たばこの煙や花粉などの粒子状物質を物理的に除去フィルターを通じて除去するタイプの機器が市販されてましたが、室内空気中の化学物質汚染の問題が取り上げられるようになり、最近ではホルムアルデヒドなどのガス状物質を除去対象とした空気清浄機が開発されています。
ホルムアルデヒド除去表示のある家庭用空気清浄機の除去原理 | |
除去原理 | 概 要 |
添着活性炭フィルター | 活性炭に特殊な化学処理をしたホルムアルデヒド吸着剤を加工 |
プラズマ放電 | プラズマ放電によるホルムアルデヒドの酸化分解 |
二酸化チタン系光触媒 | 二酸化チタン系光触媒によるホルムアルデヒドの酸化分解 |
脱臭フィルター | 脱臭フィルターによるホルムアルデヒドの吸着濾過 |
改質活性炭カートリッジ | 活性炭に特殊な化学処理をしたホルムアルデヒド吸着剤を加工 |
空気清浄機にはある一定の効果が期待されますが、実際の家庭では長期間にわたり使用されるため、触媒の耐久性や除去フィルターの交換など、定期的なメンテナンスに注意しなければならず、過大な期待を持たないほうがよいと思われます。
(ゼオライト、炭、活性炭、吸着シート、吸着ペイントなど)
室内空気中の化学物質汚染の低減を目的としたさまざまな吸着/分解剤等が市販されています。
その原理は、多孔質形状を利用して化学物質をその孔の中に物理的に吸着させる物理的手法と、化学反応を利用して化学物質を分解する化学的手法があますが、換気による除去効果と比較するとその効果は小さいと報告されています。
また一端吸着材に吸着した化学物質が再放出されたり、分解した化学物質の2次生成物質の健康への問題もあります。
現在の様々な研究報告から、吸着/分解剤にはホルムアルデヒド除去効果が期待されるものもありますが、そのメカニズム、長期間での使用に対する効果の有無、メンテナンス基準などがまだ十分明らかにされておらず、これのみに頼った対策はお勧めできません。
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