シロアリ対策は万全?



トップページ > 気になる家の話題 > シロアリ対策は万全? [3.シロアリ予防とシックハウス]

 シロアリの予防対策の現状 

最終更新 2003.4.30

最近、ベタ基礎やユニットバスの普及により、家屋のシロアリ対策上の重点が、今まで常識だった「水まわり」から「玄関」などの土間床部分に変わりつつあります。また新築の場合、土壌処理と防蟻・防腐(予防)処理を行うのが一般的になってきました。

新築の場合、既設の家屋に薬剤散布する場合に比べ安価な費用で施工可能なことや、住宅金融公庫や住宅の性能保証団体などが防蟻・防腐処置を義務つけていることなどにより普及しています。建築工事の工程では土台、大引、根太、柱、筋交、構造用合板等を設置した段階で通常地面から1Mまでの高さにある木部に薬剤を塗布します。

しろあり防蟻工事
【一般的な防蟻薬剤塗布の状態】
オレンジ色の防蟻薬剤が塗布されている。

防蟻・防腐薬剤の塗布は通常この工程1回のみで、その後に設置される上がり框や土間に接する木枠といった木部に防蟻処理を施すことは稀です。

さらに建築後、玄関のような土間床部分は直接シロアリの被害を確認しにくいのも相まって被害が発生しやすい状態となっています。

また新築の際の防除(予防)の保証期間は一般的に5年間となってい、その結果工務店などの施工者側がシロアリ被害に対して責任を負うのは新築から5年間でそれ以後は、居住者の管理責任という風潮です。

しろありの被害

例えば、建築地の土壌に高密度にシロアリが存在し、またそれがイエシロアリのように繁殖力が旺盛な種で、さらに床下がシロアリの侵入が容易な構造であった場合など非常にシロアリの加害に有利な条件そろわないと、新築から5年以内に被害が発覚するとは思えません。通常は10年〜20年という期間で発覚することが多いのです。

最近の建物は床下点検口(一般には床下収納庫)が設置されまた床下に十分な点検用の空間が確保されたり基礎の立上がり間の行き来が容易な構造となってきました。それでも既設の建物は新築時の様に容易にすべての部位に薬剤を塗布できるわけではありません。つまり薬剤による防除(予防)措置の効果は新築から年数を経るにつれて減少し、仮に保証期間が切れる度に薬剤散布をしてもシロアリによる被害のリスクは高まってゆきます。

シロアリの防除(予防)を依頼する場合、依頼者側からするとメンテナンスフリー(定期的な検査をしなくて良い)の結果を求めますが、シロアリ駆除業者は既設の建物のシロアリ発生のリスクを承知していますので、そのリスクを回避するため、薬剤の大量散布を行う事になります。

つまり、防除(予防)を依頼する側にも薬剤の大量散布のと言う状況をつくった一因があると言うことです。

「シックハウス」の問題が大きく取り上げられるようになった昨今、こういった薬剤の大量散布は減るかと思いきやそうはならず、使用する薬剤が「化学薬剤」から「自然薬剤」と言う自然界に存在する薬品に変わっただけで相変わらず大量散布が行われています。「シックハウス」の観点から見ると「化学薬剤」も「自然薬剤」刺激物には変わりがなく、薬剤の大量散布を行うこと自体が問題と言えます。


 シックハウスとシロアリ対策 

最終更新 2003.4.30

シックハウス症候群の項でも述べましたがシックハウスの原因物質はある特定の化学物質のみではありません。複数の物質が関係し、人それぞれに原因物質の許容量も異なります。したがって家に住む人の化学物質に対するリスクと防蟻のコストと効果を調整しつつ設計を進める必要があります。

シックハウスに配慮した防蟻設計をする場合、以下の方法を組み合わせて対処するのが効果的です。


[1] 物理バリア工法を使う

シロアリが突破できないガラス繊維等で作られた防蟻・防湿シートを基礎下に敷き並べます。ベタ基礎との組み合わせでほぼ基礎下からのシロアリの進入を防ぐことができます。また基礎上部に蟻返し等を設置することもあります。

これらの物理バリア工法は施工のよし悪しで効果が激変します。設置時には専門技術者による現場監理が不可欠になります。また玄関などの土間部分などは物理バリアのみでの対策が難しく、他の方法で追加対策をします。

また、プラスチックや鋼製の床つかは食害を受けませんので進入された場合の対策となります。

プラスチック製床束
↑ 黒いのがプラ束

[2] 揮発性が少なく毒性の低い薬剤(ホウ素化合物やペルメトリン等)を
    玄関等の土間廻りなどに少量かつ限定的に使用する。

少量と言うのは通常の薬剤散布のように噴霧器で床下全体に大量に吹きかけずに必要と考えられる部位のみに薬剤を刷毛塗りし薬剤が過剰(ヒバ油や木酢液などでも大量散布するのは問題がある)になるのを防ぎます。ちなみに床下全体を刷毛塗りすると防蟻工事の人件費が跳ね上がります。


[3] 床下を維持監理が容易な構造とする。

床下点検口を設置し、かつ、床下に十分な高さを取って床下の点検を容易にし、シロアリの進入や漏水と言ったトラブルに対処し易い床下を計画する。また床下内の基礎立ち上がりに人通口を設置し点検不可能な部分をつくらない。(人通口は通気口にもなります。)


[4] 家の外の基礎外周部分にシロアリの進入の手助けになるような物や、
    点検の妨げになる物を置かない。


[5] 家の外の基礎外周部分にシロアリの蟻道が出来ていないか時々確認する。


[6] 定期的に床下の状態の点検を専門家に依頼し蟻道の形成等がないか確認する。

この場合シロアリ防除営業の無料診断では無く専門家に有料の床下点検を依頼するのがお勧め。(防除と点検を別に考えるのは「防除の為の点検」にしないためです。)


[7] その他

自然通気で十分に床下が換気できるよう基礎の換気口を配置する。また換気口の前に物を置かない。(主に床下換気対策として)

土台にヒノキ、ヒバを使用する。(主に木材防腐対策として)

工事中の廃材を基礎の内側に残さない(維持監理対策として)


極端な話では有りますが上記の対策の内、[3] 番〜[6]番の対策さえ十分に行えばシロアリの被害を防ぐ事はできます。

残りの対策はあくまでもシロアリ対策上は補助的なものであっても対策の主役にはなれません。

シロアリ対策は虫歯の治療とよくにています。フッ素や歯磨きで予防しますがそれだけでは歯の健康は守れません。歯科医に診てもらうと隠れた虫歯や歯周病が見つかったりします。定期的な点検が被害予防に効果が大きいのはどの世界でも共通です。


▲このページのトップへ

関連リンク


シックハウス症候群      -気になる家の話題-
家私たちの生活に細々と入り込んでいる化学物質、住まいと暮らしを考えようとすると、避けては通れない問題。他人ごとではありません。特にすでに何らかのアレルギー症状を持っている方は要注意・・・・

基本計画案策定       -設計のプロセス解説-
基本計画案の策定は次のような作業になります。実施した現地調査・地盤調査レポートを元に、敷地の法的制約や必要な地盤の補強計画を建て主さんと打ち合わせます。レポートは、3階建・・・・

建築設計事務所に頼む      -気になる家の話題-
建築設計事務所を家創りのパートナーに選ぶというのは、少し意味合いが違います。建築設計事務所は原則として自分では、工事をしません。建築設計事務所に設計を頼む場合でも、実際に・・・・

敷地地盤調査    -設計のプロセス解説-
住宅事情により造成地の軟弱地盤や傾斜地の住宅が増加した現在、地盤沈下や不同沈下・圧密沈下を未然に防ぐため 地盤調査により地盤の性状を正確につかみ、地盤改良の必要性の・・・・

地盤改良工事    -現場管理のプロセス解説-
地盤調査の結果をもとに、実施設計で計画された現場地盤の補強を行います。地盤の状況や建物の計画に応じて、表層地盤改良工法、小口径鋼管杭、柱状改良杭工法などの工法が・・・・

土地探しのツボ   -気になる家の話題-
家創りの最初の一歩は土地選び・土地探し。ここで失敗すると後々思わぬ問題や出費が起きる事も・・・。そうならないように土地選びのツボをお教えします。

地震対策と耐震補強     -気になる家の話題-
木造住宅、特に在来工法は耐震性能に劣るのでは?と質問される事が良くあります。「そんな事はありませんよ。」といつも答えるのですが、にわかには納得出来ないようです。このHPをご覧の・・・・

欠陥住宅と工事監理     -気になる家の話題-
相変わらず「欠陥住宅」の話がTV等で紹介されています。・・・悪徳業者は「建て主は無知だから手を抜いてもわからない。」「安くて良い家なんて出来る訳が無い。」、「欠陥住宅にしたくなかっ・・・・





このホームページは Kodou Kenntiku Koubou が運営しています。ご質問、設計・監理業務依頼等は こちら
情報のご利用に際しては利用者ご自身の自己責任においてご利用ください。また、免責事項もお読み下さい。