最終更新 2003.7.30
シックハウス症候群の原因物質といわれるものにはさまざまなものがあります。
昔の住宅は、木や土、紙などの自然の素材が主要な建築材料でした。
近年は利便性や経済性、施工性を向上させるために、下地材料や仕上げ材料としてさまざまな合板類やボ−ド類、壁材や天井材としてビニ−ルクロス類、左官材料や塗料、合成樹脂系の床材、家具材料などが新しい建築材料として多数開発され広く使用されています。
それらの材料の多くには接着性や防腐性、柔軟性、加工性などを高めるためにホルムアルデヒドやトルエン、キシレンなどの有機溶剤、可塑剤など、さまざまな化学物質が使用されています。建物をカビや腐れ、白蟻などの被害から防ぐために土台や下地材料にも防腐剤や白蟻防除剤などの化学物質が使用されています。
また室内にはダニやカビ、塵埃、花粉など生活の中で発生しているものもあります。そして毎日の生活においては、便利で快適な生活を維持するために防虫剤、防カビ剤、ヘアスプレ−、芳香剤など、化学物質を使用した多くのものが日常的に使用されています。
現在の私たちの生活はこのようなさまざまな原因物質に囲まれた生活をしており、それらは微量ながら常に住宅内に発散し、無意識のうちに室内空気を汚染しているのです。とくに建築材料は一度使用すると後日の撤去や変更が困難で、材料や使用方法によっては長期にわたり汚染物質を発散することになるので使用に際しては十分な注意が必要です。
化学物質の主な発生源
※国土交通省住宅局パンフレットより
< 各種の汚染源と発生する化学物質の一例 > | ||
汚染源 | 化学物質 | |
建築材料 | 合板、集成材 | ホルムアルデヒド、トルエン |
断熱材 | スチレン、フタル酸エステル類 | |
塩ビ系壁紙 | フタル酸エステル類 | |
木材保存剤、防蟻剤 | 有機リン系、ピレステロイド系化合物 | |
家庭用品 | 洗浄剤 | テトラクロロエチレン、アルコール類、塩化メチレン、アセトン |
塗料、スプレー | トルエン、キシレン、アルコール類、ノルマルヘキサン | |
殺虫剤 | パラジクロロベンゼン、ピレステロイド系、有機ハロゲン化合物 | |
芳香剤 | プロピレングリコール、エチルエーテル、アセトン、エチルアルコール | |
家具、絨毯 | ホルムアルデヒド、スチレン、エチレングリコールエーテル | |
建築物 | 暖房 | 窒素酸化物、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化硫黄、メタン |
燃焼器具 | 窒素酸化物、二酸化炭素、一酸化炭素、プロパン、ブタン | |
車庫 | 一酸化炭素、窒素酸化物、二酸化硫黄、ベンゼン、ニッケル、白金 | |
建築資機材 | n-デカン、トルエン、ホルムアルデヒド、ラドンガス、ウレタン | |
生活起因 | たばこの煙 | ベンゾ(a)ピレン、無機ガス、含窒素化合物、ケトン類 |
炊事等の燃焼 | ベンゾ(a)ピレン、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物、メタン | |
飲料水 | トリハロメタン、トリクロロエチレン、クロロホルム | |
ヒト、動物由来 | 二酸化炭素、代謝物による揮発性ガス |
< 汚染化学物質の概要 > | |
ホルムアルデヒド | 常温では無色のガス体で刺激臭があります。水によく溶け、約37%の水溶液がホルマリンとして知られています。合板や内装材、家具の接着材や繊維製品の樹脂加工などに広く用いられています。皮膚や粘膜に対する刺激性が強く、発ガン性があるともいわれています。 |
トルエン | 常温では可燃性の液体で無色。ベンゼンのような芳香があります。接着材や塗料の溶剤および希釈剤として用いられます。住宅内では、内装材などの施工用接着材や塗料からの放散が考えられ、これらを使用した家具類から放散することもあります。目や気道を刺激し、頭痛、疲労、吐き気などを引き起こすことがあります。 |
キシレン | 常温では可燃性の液体。無色でベンゼンのような芳香があります。トルエンと同様、接着剤や塗料の溶剤及び希釈剤として用いられます。住宅内では、内装材などの施工用接着剤や塗料からの放散が考えられます。これらを使用した家具類から放散することもあります。目、鼻、のどを刺激し、頭痛や疲労などを引き起こすことがあります。 |
エチルベンゼン | 無色で特有の芳香があります。常温では可燃性の液体。接着剤や塗料の溶剤及び希釈剤として用いられます。住宅内では、合板や内装材などの接着剤や塗料からの放散が考えられます。これらを使用した家具類から放散することもあります。のどや目を刺激し、めまいや意識低下などを引き起こすことがあります。 |
スチレン | 無色ないし黄色を帯び、独特の臭気がある。常温では油状の液体。ポリスチレン樹脂、合成ゴム、不飽和ポリエステル樹脂、ABS樹脂等に含まれる高分子化合物の原料として用いられます。住宅内では、これらの樹脂を使用した断熱材や浴室ユニット、家具、包装材などから放散する可能性があります。目やのどを刺激し、眠気や脱力感などを引き起こすことがあります。 |
< 厚生労働省が策定した室内濃度指針値 > | ||
VOC名 | 指針値 | 特徴 |
ホルムアルデヒド | 100μg/m3 (0.08ppm) |
無色で強い刺激臭のある物質。合板やパーティクルボードなどの建材、壁紙を張る際の接着剤などに含まれているものがある。 |
トルエン | 260μg/m3 (0.07ppm) |
通常は無色の液体。接着剤や塗料の溶剤などに使われる。 |
キシレン | 870μg/m3 (0.20ppm) |
無色透明の液体。接着剤、塗料の溶剤や、可塑剤の原料として使われる。 |
パラジクロロベンゼン | 240μg/m3 (0.04ppm) |
衣料用防虫剤、防臭剤、燻蒸剤、防ダニ剤。 |
クロルピリホス | 1μg/m3 | ケーブルや建物をシロアリの被害から防ぐために用いる薬剤。主成分は有機リン系殺虫剤やピレスロイド系殺虫剤。 |
スチレン | 225μg/m3 (0.05ppm) |
発泡スチロール、合成ゴム床材、合成樹脂塗料ポリスチレンホーム、合成ゴム接着剤。 |
エチルベンゼン | 3800μg/m3 (0.88ppm) |
スチレンモノマーの原料。 |
フタル酸ジ‐n‐ブチル | 220μg/m3 (0.02ppm) |
塩化ビニールなどの材料に柔軟性を与えたり、加工しやすくするために加える薬剤。ビニールクロスや断熱材、接着剤などに使われているものがある。 |
テトラデカン | 330μg/m3 (0.041ppm) |
トルエン、キシレンの代わりに用いられる溶剤に含まれる可能性 |
ノナナール | 230μg/m3 (0.040ppm) |
香料(バラの蜜の匂い)。工業原料にも。 |
フタル酸ジ‐2‐エチルヘキシル | 120μg/m3 (0.0076ppm) |
可塑型(ビニールシート、プラスチック等)に含まれる可能性。 |
ダイアジノン | 0.29μg/m3 (0.023pm) |
殺虫剤等に含まれる。 |
アセトアルデヒド | 50μg/m3 (0.03ppm) |
|
フェノブカルブ | 130μg/m3 (15ppb) |
|
カッコ内は気温25℃の場合
TVOC(トータルVOC) 400μg/m3 (中古住宅) 1000μg/m3 (新築住宅) |
< 入居後からの室内空気中の化学物質濃度の推移 > | ||
化学物質濃度の挙動 | 汚染源 | 汚染化学物質 |
入居後から経時により 濃度が減衰 |
新築時に 建材や施工材から放散 |
ホルムアルデヒド、トルエン、アセトン、CFC-11(断熱材の発泡剤)アセトアルデヒド、エチルベンゼン、キシレン、スチレン |
入居後のある時期に 濃度が高くなる |
居住者による持ち込み | パラジクロロベンゼン(防虫剤、防臭剤)、1,1,1-トリクロロエタン(スプレー缶、クリーニング) |
入居後から濃度が向上 | その他の生活起因 | クロロホルム(水道水) |
特定の部位が高濃度 | 収納棚が高濃度に汚染 | ホルムアルデヒド(合板の接着剤) |
ホルムアルデヒド濃度は、夏場が高く冬場が低いといった温度と絶対湿度に連動する変化を繰り返しながら、経年により濃度が減衰する傾向があった。また、新たな家具の持ち込みが多い住宅において、ホルムアルデヒド濃度が高い傾向がある。
塗料や接着剤の希釈剤として用いられる蒸散支配型の化学物質(ホルムアルデヒド、n-デカン、n-ドデカン、n-ウンデカン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン)は、竣工直後の戸建て住宅で最も濃度が高い。
衣類の防虫剤やトイレの防臭剤として一般的に使用されるパラジクロロベンゼンは、入居後のある時期に濃度が高くなることがあり、居住者の生活行為による影響を受けていることが考えられる。
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