間取りのツボ



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 部屋と部屋との関係を見極める 

最終更新 2003.11.27

ここまで要望、希望をキーワードとしてピックアップしてきましたが実際の間取り設計はそれらの要素を結び付け、まとめ上げて行く作業になります。いよいよ基本設計にとりかかります。

まずはサブタイトルやイメージ、キーワードといった要素を「ゾーン」という概念に置き換えます。例えば「一家だんらんのスペース(ゾーン)」という名前で紙の上に鉛筆で○を描きます。こんどはこの「一家だんらんのスペース(ゾーン)」に関係させたい要素(ゾーン)を同じ様に描き込みます。こういった作業をゾーニングと言い、間取り設計の骨格になります。

ところで、設計初期段階でよく使われる設計用語に「生活動線」という言葉があります。

これは生活の中で住人が家の中をどう動くのかを捉えた道筋のことですが、一般に住宅計画では短くて単純な生活動線になるように設計することが良い間取りの条件と言われています。

中でも毎日の家事に関わる「家事動線の計画」は特に重要とされています。しかし実際の設計の経験からすると住宅などの小規模建築ではさほど「動線を計画するぞ」と意気込まなくても良いと思っています。と言うのも、ゾーニング作業を進め各ゾーンの意味付けと他のゾーンとの関係を煮詰めて行くと自然に動線は整理されて行きます。動線を意識するのはある程度基本設計が進みドアの開き勝手などをチェックする時くらいでしょうか。「動線計画」はあくまでも間取りをチェックする為の方法論であって間取りを組み立てる方法論ではありません。

上の図はある住宅のゾーニングスケッチです。○がゾーンを表し、茶色の線が機能的なつながりを、赤色の線が視覚的なつながりを表しています。

この視覚的な関係は結構重要で、機能的なつながりをハードウエア的な物とすると、視覚的なつながりはソフトウエア的な物、つまりデザインの骨格になります。庭を室内に引き込んだり、空間をのびやかに見せたり、部屋と部屋の付かず離れずの距離感を演出したりといった事はこの視覚的要素に大きく左右されます。

ここで上のゾーニングスケッチを読み解いてゆきましょう。まず大きな特徴は「一家だんらんのスペース」を中心に各要素がそれを取り囲むような関係になっています。どのゾーンからでも1歩ゾーンから出るとそこは「一家だんらんのスペース」という構成が基本になりそうです。

もうひとつの特徴は「キッチン」、「ダイニング」から「庭」、「一家だんらんのスペース」が見渡せる関係になっています。これは家事をしているときでも「一家だんらんのスペース」の気配がわかる様にという希望から来ています。

あと、接客スペースが相手との親密度によって2段階に別れています。「一家だんらんのスペース」は他のゾーンの中央ホール的な要素でもあるので、家族のスペースとお客さんのスペースを分けるため接客の談話コーナー的な部分を設けてはという提案です。

あとは、トイレが寝室の近くにほしいとか、洗濯物を干すのに水廻りは庭に近い方が良いしキッチンにも近い方が良いとか、納戸は特に関連する要素無しといったイメージがよみとれます。

ここまで整理するともう出来あがったような気分になりますが、まだまだ道は遠く10人の設計士さんがいれば10通りの間取りが出来あがります。ゾーニングは間取り設計の骨格です。肉付けのしかた次第でまだまだ良くも悪くもなり、ここからが設計士さんの腕の見せ所です。

ゾーニング図からさらに設計を進めたのが次の図です。

かなり間取り図っぽく成って来ました。が、面積もかなり大きくなりそうなので調整が必要になりそうです。

ところで、動線計画は不要とは言いましたが、最初から意識的に取り入れると家の使い勝手が豊かで面白くなる動線もあります。それは回遊型の動線で、家の中をグルリと一周して元の所に戻って来れる様に計画します。

また、視線の計画をする上で家の中を遠くまで見通せるルートを作ると広々とした感じを演出でき特に狭小住宅では部屋を大きく見せる有効な方法です。


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